赤べこは天然痘よけ?無病息災のいわれや伝説について解説

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ゆらゆらと首を振る動作が特徴的な赤べこは、福島県会津地方の郷土玩具。

そのユーモアな動きや見た目のかわいらしさで昔から隠れたファンを多く生み出していましたが、最近ではテレビに取り上げられたことから、以前にもまして全国的に人気が出てきました。

さらにこの赤べこ人気に拍車をかけたのは、新型コロナウイルスの流行です。

赤べこには元々、魔除けや疫病除けなどの願いが込められていることから、アマビエと並んでコロナウイルス退散のモチーフとしていろいろな場所で取り上げられました。

この記事では赤べこに込められた魔除け・疫病除けの意味や、天然痘にまつわる伝説について解説します。

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赤べこと天然痘の関係1:魔除け・疫病除けの効果

元々の赤べこの成り立ちは郷土玩具、つまり言ってみれば子どものおもちゃです。

今ほどいろんなおもちゃや娯楽がない時代、子どもたちが遊ぶためのおもちゃとして作られてきました。

頭を押すとゆらゆらと首を振る動作や、マスコット的なかわいらしさから、昔はたくさんの子どもたちにとって身近なおもちゃとして活躍したのでしょう。

元々は会津藩の藩主であった蒲生氏郷(がもううじさと)が、京都の職人を呼び寄せて張り子(型枠に紙をはりつけて成型する技術)の技を下級武士など城下の人々に習得させたという歴史がありますが、その頃から赤べこの色はその名のとおり「赤」だったようです。

赤色・朱色といった色はそもそも神聖な色とされており、魔除け・厄除け・疫病除けとして効果があると言われています。

例えば、神社の鳥居は例外なく赤ですよね。全国的にも、この神聖な色をあしらった郷土玩具や民具は数多く存在しています。

昔は子どもが病気にかかって命を落としてしまうことも多く、赤べこは子どものおもちゃであるとともに、常に子どものそばで邪気を払い守ってくれる、無病息災の願いがこもったお守りとして位置づけられていたのです。

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赤べこと天然痘の関係2:天然痘と会津の赤べこ伝説

今でこそ天然痘はワクチンを作る技術が確立され、予防接種によって世界から根絶された感染症ですが、完全に根絶された1980年あたりまでは、世界中で猛威をふるった恐ろしい病気でした。

感染すると全身に特徴的な赤い発疹や水疱ができ、頭痛・高熱・倦怠感などが現れたのち高確率で死に至ります。

事実のほどは定かではありませんが、この天然痘がかつて会津地方で流行し多くの死者を出した時、赤べこを持っていた子どもたちは感染しなかったという伝説が残っています。

本当に感染しなかったのかどうかはともかく、何とかこの恐ろしい天然痘から幼い子どもたちを守りたい、という会津の人々の思いがあったことがうかがい知れます。

ちなみに天然痘のようないわゆる疱瘡(ほうそう)は赤い発疹ができますが、昔の人々は疱瘡神が取りつくことで発病すると信じており、疱瘡神が好む赤色のもの、例えば赤べこなどを疱瘡よけ(つまり身代わり)として考えていました。

また赤べこに描かれた黒い斑点は、天然痘の痕(かさぶた)を表していると言われています。

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赤べこと天然痘の関係3:天然痘ワクチンの発見

ところで、今さらですが赤べこの「べこ」って何のことだか分かりますか?

そんなの当然知ってるよと言われるかもしれませんがおさらいとして。そう、「べこ」とは会津地方の方言で「牛」を表す言葉です。

実は天然痘のワクチンはべこ、すなわち牛から発見されたものなのです。

天然痘ワクチンは1790年代に、イギリスの医学者であるエドワード・ジェンナーによって発見されました。ジェンナーは、牛がかかる伝染病である「牛痘」にかかった人は、その後天然痘にかからないという事実に着目し、牛痘から天然痘ワクチンを開発しました。

牛痘は弱い・致死率が低い天然痘であり、人為的に牛痘を接種することで天然痘に対する免疫をつけたのです。

ちなみに牛痘は、牛の乳房にできた水疱を搾乳のときに触ってしまうことでもかかるため、イギリスでは乳牛を飼っている家では天然痘にかかるより先に牛痘に感染してしまい、天然痘にはかからないことが多かったようです。

会津地方でも、牛を飼っていた家では天然痘の患者が出なかったという話が残っているようです。

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赤べこと天然痘まとめ

ここまで見てきたように、赤べこは会津では古くから子どものおもちゃとして親しまれてきたとともに、天然痘をはじめとする疫病や魔・厄を払う家の守り神としても考えられてきました。

現代になり、新たに新型コロナウイルスという感染症が世界中に広まるなか、今度は新型コロナウイルス除けの願いを込めて家に飾るご家庭も増えているかもしれませんね。

 

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