公務員が副業でユーチューバー(Youtuber)になるのは違法?

Youtuber 副業

ひと昔前まではとても考えられなかったほど、Youtubeは現代日本の生活に浸透しています。
通信技術が発達してきたこともありますが、テレビのリモコンにもナチュラルにYoutubeボタンが配置されるようになり、今や若い方を中心に、Youtubeはなくてはならないメディアであると言えるでしょう。
と同時に、ユーチューバーとして活動し収益を得る人、あるいは目指す人も加速度的に増えてきています。
この記事では、公務員が副業としてユーチューバー活動をする場合のリスクや、できるだけ安全に活動するためのポイントをお伝えします。

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公務員はユーチューバーとして活動できるのか?

まず公務員がユーチューバーとして活動すること自体に問題はありません
公務員であっても国民の1人には違いなく、日本国憲法によって表現の自由が認められていますので、ユーチューバーとして個人を表現することそれ自体は憲法によって保証されていると言っても良いでしょう。

ただ投稿する内容によっては、あるいは収益を得るとなってくると、国家公務員法や地方公務員法の縛りが出てきます。
いち個人としてはOKなことでも、公務員が行った場合はその身分が危うくなるということがあります。

まず収益についてですが、国家公務員・地方公務員ともに私企業(営利企業)への従事に関する制限が課されています
(国家公務員法第103条・104条、地方公務員法38条)

これによって、基本的には公務員が営利企業の一員となったり、自ら営利企業を営むということは原則的に禁止されています。
ただこれはあくまで原則であって、職員の営利企業従事申請に対して機関の長(国であれば内閣総理大臣、市町村であれば市町村長など)が許可すれば営利企業への従事が可能です。

例えば不動産(戸建てやアパートなど)を貸して賃料を得る場合も「営利企業への従事」とみなされますが、規模や運営方法によってはほぼ確実に長からの許可が得られます。
(具体的には5棟10室未満の規模で、管理業務を不動産会社等に委託していることが条件)

基本的に公務員には職務専念義務(勤務時間中には職務に専念しなければならない)がありますが、あまり大規模でなく、管理も委託しているならば職員本人が実働する部分がほとんどなく、通常業務に影響を及ぼす可能性は低いと判断されるわけです。

その点、ユーチューバーとなると自分の実働(動画撮影・編集・投稿など)が前提となるため許可を得るためのハードルはかなり厳しくなるものと予想されます。
また不動産賃貸の許可などは、実は親からの相続などで職員が申請する事例が多いため人事サイドも手慣れたものなのですが、ユーチューバーはどの組織・自治体でも申請例がまだまだ少なく、公務員の習性として「とりあえず前例がないから却下する」という可能性は非常に高いと考えられます。

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発信する内容にも注意が必要!公務員として不適切な発信はNG

公務員がユーチューバーとして活動する場合には、収益が発生するかどうかに関わらず発信する内容にも注意が必要です。
そもそも全体の奉仕者であり、様々な面で周囲の手本となるべき立場の公務員は、公序良俗に反する内容や、品位を疑われるような不適切な内容を発信すべきではありません。
発信内容によっては、バレた場合に戒告、減給、停職、免職などの懲戒処分を受ける可能性があります。

・差別や誹謗中傷などの発言を含むもの
・アダルト、わいせつ、児童ポルノ等の要素を含むもの
・職場の機密情報や個人情報に関わる内容を含むもの
・肖像権、著作権など他人の権利を明らかに侵害しているもの
・その他一般的に不適切、非常識とされる内容を含むもの

できるだけ一般に受け入れられる内容で、自分以外のものが動画のメインであったり、映っても手元だけという構成になるものが良いでしょう。

・制作(レゴやプラモなど)
・ゲーム実況(グロ・暴力系を除く)
・おもちゃ紹介
・猫などの動物動画

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副業ユーチューバーとして収益を得るには?

基本的に動画配信により収益が発生しなければ、公務員がユーチューバーとして活動しても問題にはなりませんし、職場への申請も必要ありません。配信内容に問題さえなければ、趣味の範囲内として解釈されるでしょう。
しかし、実際に収益が発生している、あるいは収益の発生を目的として広告等を掲載している場合は、ほとんどの場合「私企業(営利企業)への従事に関する制限」に抵触すると解されますので職場への申請が必要になります。
申請して許可が下りれば大手を振って活動できますが、実際にはなかなか許可が下りないことも予想されます。

申請や許可なしで収益を得る方法としては、例えば配信のアカウントや収益の振込先を家族の誰か(公務員以外)の名義にするというやり方があります。
国家公務員法・地方公務員法による副業制限は公務員にのみ課せられるものなので、公務員ではなく、副業が可能な家族の誰かがユーチューバーとして活動し、収益を得ることには何ら問題がなく、許可も不要です。

例えば妻名義でアカウントを作り、顔出しなし、音声は加工して動画を配信すれば、自分が配信しているとバレる確率は相当低くなります。
収入も妻が受け取り申告するようにすれば、所得税・住民税の情報からバレるおそれもまずありません。

ただ万一何かの理由でバレた場合、「名義は妻だが実質的な運営者が公務員であった」ということになると問題になります。結局は妻を隠れ蓑にしているだけで、実際は公務員が事業をしていることになるからです。

できれば「何もやらなくていいから名義だけ貸して!」と言うのではなく、ユーチューバーという事業や内容をきちんと説明し、事業主体として理解・協力してもらいましょう。
そうすれば、何か聞かれたときに「旦那が勝手にやってたんです」とは言われなくなります。

そのうえで、配信する動画については「自分が撮影したものを、妻の事業に無償提供している」という形を取ると良いでしょう。いわばボランティアです。
一般的には無償のボランティアが問題になることは皆無です。無償提供先が家族という点でグレーな部分はどうしても残りますが、公務員本人が「無償で」行っていたことを示すのはマイナス材料にはなりません。無償提供について、契約書や覚書なども交わしておくとベターです。

またYoutubeで広告収入を得るには一定の基準を満たす必要があり、そもそも配信している動画の再生時間や、チャンネル登録者数が基準を満たしていなければ1円の収益も発生させることができません。
まずは基準を満たすことを優先して考え、広告収入を発生させられる状況になったら改めて考えれば良いでしょう。

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バレた場合にはどんなリスクがある?

バレたときの状況や内容によって変わります。
それがどこまで悪質かによって判断されると思いますが、最悪は懲戒免職もあり得ると考えてください。

ただ、収益を得たことが直接の要因となって懲戒免職になる可能性はかなり低いです。
ユーチューバー以外の副業での処分の例を見ても、いきなり最後通告ということはありません。
まずは事実確認の後、口頭注意、戒告、改善命令、指導などがなされるでしょう。
ここで指導に従い対処(例えば広告掲載を止めて収益を0にするなど)すれば、その事実を考慮されあまり重い処分は課されにくいでしょう。
逆に指導に反発すれば、重い処分は避けられません。

なお配信内容によっては、注意や指導をすっ飛ばしていきなり重い処分になることも十分考えられます。
公務員として不適切な内容、他人の権利や尊厳を侵害するような内容は投稿しないよう細心の注意を払ってください。

 

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極力リスクを減らしてユーチューバー活動をするには

万一バレた場合の悪質さによってリスクが変わるとお話ししましたが、これには「公務に影響を及ぼしていないこと」も含まれます。したがって、次のような行為は厳に慎みましょう。

・勤務時間中に企画、録画、編集その他関連作業を行うこと(出張、時間外勤務を含む)
・公務のために支給されている端末や通信回線などの資源を使うこと
・副業に根を詰めすぎて、通常勤務に身が入らない、怠ける

公務員は法律により、勤務時間及び職務上の注意力の全てを職責遂行のために使わなくてはならない、という「職務専念義務」が定められています。(国家公務員法101条、地方公務員法35条)

これに違反しているとみなされるとさらに処分が重くなりますので、絶対にこのようなことはしないよう注意が必要です。

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公務員は副業ユーチューバーを諦めたほうが良いのか?

総合的に考えて、結論としては「諦めなくて良い(トライして良い)」と思います。
ただしバレないように、あるいはできるだけブラックな要素をなくすように様々な対策をする、また公務員として不適切な内容を発信しないことが条件です。

できればバレたときにも説明ができるよう、家族名義での事業として、家族にもしっかり協力を得られる体制を作りましょう。
また万一バレてしまった場合でも、素直に注意・指導に従えばそうそう致命的な処分を受ける可能性も低いです。
(ただし組織内で出世を目指している人はやめておきましょう。注意を受けたことが昇格の足かせにならないとも限りません)

少子高齢化により日本全体で労働力が加速度的に減少しつつあるため、労働力確保を念頭に、将来的には公務員の副業が公に認められることも十分に考えられます。
それまで手をこまねいているのではなく、副業ユーチューバーを目指している方は、まずはYoutubeの広告掲載基準を満たすことを目指して活動してみましょう!

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