所得税の原則的な取扱いと超過累進税率(所得税の基本)

制度・仕組み

FP2級の過去問から、所得税の原則的な取扱いについてです。

2017年9月試験からの出題。

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所得税の原則的な取扱い

所得税の原則的な取扱いに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1.所得税は、国や地方公共団体の会計年度と同様、毎年4月1日から翌年3月31日までの期間を単位として課される。
2.課税総所得金額に対する所得税は、所得の金額に応じた超過累進税率により計算される。
3.所得税は、納税者の申告により、税務署長が所得や納付すべき税額を決定する賦課課税方式を採用している。
4.所得税の納税義務者は、日本国籍を有し、かつ日本国内に住所がある個人に限定されている。

所得税や確定申告に関する基本的な知識があれば、そこまで難しくはない問題です。

まず1ですが、これは確定申告をやったことがある人ならば分かるでしょう。所得税が課せられる期間の単位は、会計年度(4月1日~3月31日)ではなく、一般的な年単位(1月1日~12月31日)です。

確定申告未経験の方は、まず一度確定申告をやってみましょう。実際にやってみることで、知識が丸暗記ではなく経験・理解として体の中に残ります。

次に、少し飛ばして3ですが、これもすぐに間違いと分かります。

日本の所得税は、原則として納税者本人が自主的に所得金額や税額を計算して申告・納税する「申告納税方式」を採用しています。

したがって所得から税額に至るまで、税務署長が決定する余地はなく全て自分で申告・納税します。これが法に定める本来の姿であって、サラリーマンに代表されるように、給与から「所得税が自動的に天引きされる」という状態は実は例外にあたります。

基本的には自己の責任で全て計算し申告・納税。だからこそ、税務署の「税務調査」が存在するのです。

日本では原則として各個人に申告・納税を任せつつ、申告に誤りや違法行為の疑いがあれば税務署員が「税務調査」を実施し、申告内容の是正を指導します。

こんなの、選択肢にある通り「税務署長が個人の所得や税額を決定」していたらあり得ない話ですよね?

この事実から考えても、所得や税額について税務署長が関与しているという記述が誤りであることが分かります。

次に選択肢4ですが、当たり前のような書き方で逆にひっかけっぽいので迷う内容です。

結論から言うとこれも誤り。

国税庁のページでは「非居住者」や「非永住者」などの規定がありますが、この辺りは説明が長くなりますし国税庁のページのほうが分かりやすいのでこちらを確認してください。

納税義務者となる個人(国税庁ウェブサイト)

荒っぽくまとめると、「日本国籍がなくても」「住所がなくても」「日本に住んでいなくても」、日本国内を原因(源泉)とする収入については所得税がかかります。(この収入を「国内源泉所得」といいます)

例えば海外に住んでいる個人が、日本にマンションを持っていてそこから賃料収入を得ている場合、その賃料収入に対しては日本の所得税が課税されることになります。

ということで消去法で、最後に残った選択肢2が正解(適切な記述)となります。

これも字面だけを見ると当たり前っぽいことが書かれているのですが、1点気になるのが「超過累進税率」という記述です。

この用語が分からないために悩んでしまい、同じく当たり前っぽい記述の選択肢4に引きずられてしまう人も多いでしょう。

累進課税ならわかるけど、「超過累進税率」って何?と思うでしょう。

超過累進税率とは、課税所得全てに一定の税率をかけて税額を求めるのではなく、一定の所得を超える場合に、その超えた金額部分にだけ特定の税率をかける課税方式のことです。

具体例で見てみましょう。

例えば総所得が300万円の人の場合、単純に所得税の税率表を使って 300万円×10% = 30万円 が税額、という計算にはなりません。

所得税率の表は、単純に該当する所得の層に示された税額をかけるという見方ではなく、

195万円までは5%
195万円~330万の135万円には10%
330万円~600万円の270万円には20%
・・・

という解釈をするのです。

つまり総所得300万円の場合は、

195万円×5% = 9.75万円
(300-195)万円×10% = 105万円×10% = 10.5万円

で、合計所得税額は20.25万円となります。

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正答のポイント

この問題では、所得税に関する基本的な知識のほか、ひっかけっぽい選択肢を見極めるため「所得税の賦課対象」「超過累進税率」についての知識が必要になります。

今回正答できなくても、次回似たような問題が出てきた時に正答できるよう、言葉の意味や定義を覚えておきましょう!

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