あまり縁起や迷信を信じていない人でも、「丙午(ひのえうま)の年に生まれた女性は縁起が悪い」という話は聞いたことがあるかもしれません。
ただの迷信と侮るなかれ、この言い伝えのせいで、実際に丙午(ひのえうま)の年にあたる1966年は日本の出生率が例年の4分の3程度に落ち込みました。
※総務省統計局公表の新成人人口グラフ
次の丙午(ひのえうま)にあたる年は2026年で、この年にもやはり出生率が落ち込むのでは?ということが心配されています。
確かに「縁起が悪い」と言われる年に生まれる子どもがかわいそう、と考える親からすると、丙午にあたる年の出生率が下がるのは分かるような気もします。
実際のところ、丙午をはじめとして「縁起が悪い」と言われる干支は本当に何か悪いことが起きるのでしょうか?
縁起の悪い干支なんてない
結論から言えば、絶対的に「縁起が悪い」という干支は存在しません。
確かに、干支によって「このような性格である」「このような傾向がある」というある程度の定説や説明はあります。
しかし、その性格や傾向が良いものなのか、悪いものなのかは見る人によって判断が分かれますし、国や時代によっても価値観が全く変わるため、一概に「これが良くない」と判断することはできないのです。
例えば一般的に縁起が悪いと言われがち(特に女性)な丙午は、「気性が激しい」「気が強い」「人に媚びない」傾向があると信じられています。
昭和の時代であれば、「気が強くて男勝りな女性なんて嫁のもらい手がない」と言われて敬遠されたかもしれませんが、女性の地位や立場も基本的に同じとされている今の時代、昔よりは多少の気の強さが必要ではないでしょうか。
気が弱くて、一歩下がって人の顔色をうかがってばかりというのも、今の時代になかなか馴染まないのではと個人的には考えてしまいます。
昔に比べると価値観の基準が大きく違ってきていますし、多様さも増しているなか、一概に「この干支は縁起が悪い」という考え方はある意味前時代的で、昭和の時代から思考停止していると言えるでしょう。
干支ってそもそもどういうもの?
ちなみに私たちが一般的に「干支(えと)」と呼んでいるものは「子(ね)・丑(うし)・寅(とら)・卯(う)・辰(たつ)・巳(み)・午(うま)・未(ひつじ)・申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)・亥(い)」の12種類を指すことが多いですが、実は本来60種類あります。
「干支」という言葉自体がそもそも「十干十二支(じっかんじゅうにし)」の略なのです。
十干(じっかん)とは「甲(きのえ)・乙(きのと)・丙(ひのえ)・丁(ひのと)・戌(つちのえ)・己(つちのと)・庚(かのえ)・辛(かのと)・壬(みずのえ)・癸(みずのと)」の10種類からなる要素で、それぞれが陰陽五行(おんみょうごぎょう)と対応しています。
木・火・土・金・水の五つの気についてそれぞれ陽と陰を割り当てており、例えば甲(きのえ)は「木の陽」を表します。
私たちが普段「干支」と呼んでいるのは「十二支(じゅうにし)」で、十干とともに毎年変わり巡っていきます。
10年で1巡する十干と、12年で1巡する十二支の組み合わせ(=最小公倍数)は60種類となるため、ある干支の年に産まれた人が再び自分の干支にめぐり合えるのは60年後です。(これが「還暦」です)
いわゆる「十二支」しか知らないと「丙午」の丙(ひのえ)って何のこと?と思うかもしれませんが、十干が分かるとイメージがつきますよね。
縁起が悪いと言われる「丙午」は不幸になる?
さて、縁起が悪い縁起が悪いと言われる丙午ですが、これは何らかの根拠があるというよりは、うわさや迷信によって人々に根付いたイメージです。
一旦悪いイメージがついてしまうと、何か事件や事故があるたびに「ほら、あの人は丙午生まれだったから・・・」などとささやかれてしまうので、始まりはちょっとした迷信めいたものでも、長年積み重なって強い思い込みになってしまいます。
確かに干支にはそれぞれ「このような性質・気質がある」と言い伝えられるものがありますが、それらはあくまでただの性質・気質であり、その善悪や幸不幸をどう捉え、どう判断するのかはその時々の時代や人によって変わります。
要はその人の考え方次第というわけで、「縁起が悪い・不幸になる」と思い込んでいればそういった出来事ばかり目につきます。
逆に「気にしない・跳ね返してやる」くらいの気概を持っていれば、不幸だなどと思うこともありませんので、世間一般の丙午のイメージに振り回されすぎないようにしましょう。
ちなみに、丙午の悪評の元になった迷信や言い伝えは、主に次の2つがあると言われています。
「火」の気が重なるため気性が荒いという言い伝え
丙午の「丙(ひのえ)」は前述した十干のなかでは「火の陽」の気をもっています。
また十二支にも実は対応する気があり、午もこれまた「火の陽」の気であることから、十干・十二支ともに「火」の気が重なり、それによって気性が荒くなると考えられていました。
「気性が荒い」という言い方をするとネガティブな響きがありますが、そもそも「火の陽」がもつ気質は「明るい・派手・ポジティブ・活動的」といったものであり、言い方しだい、捉え方しだいという要素が大きいです。
また当然ですが、丙午生まれの全ての人が同じような気質を持っているとは限りません。
江戸時代の人物「八百屋お七」に由来する迷信
恋人に会いたい一心で自宅に放火し、火あぶりの刑にされたと伝えられる江戸時代の少女「八百屋お七(やおやおしち)」が丙午の生まれであったといわれることから、丙午の女性はお七のように激しいと噂されるようになったそうです。
お七の存在は、江戸時代の作家、井原西鶴(いはらさいかく)による作品「好色五人女(こうしょくごにんおんな)」のエピソードのモデルとして取り上げられたことから広く知られるようになりました。
偶然の火事をきっかけに出会い恋仲になった男性に再会したいがために、自宅への放火という大罪を犯してしまう極端さ、激しさは当時の人々にとってもよほど衝撃的で、印象に残ったことで丙午のイメージが悪くなってしまったのかもしれません。
縁起の悪い干支についてのまとめ
ここまで、次のようなことについて解説してきました。
・丙午生まれだから不幸になるといったことはない
・それぞれの干支に対応するとされる性質・気質はあるが、全ての人がその気質を持つわけではない
それぞれの干支に対する世間一般のイメージや通説というものがある程度固まっているのは事実です。
例えばそれを、自己分析の参考にしたり、相手との関係性を築くための参考にしたりといった一つのツールとして使うのは有意義かなと思いますが、あまりにそれを重視しすぎたり思い込みすぎると、自分や相手を不幸にしてしまうこともあります。
参考にするのは大いに結構、ただし当然のことながら、干支はその人の全てを表すわけではないし、人生の全てを決めるわけではないことは覚えておいてほしいと思います。
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